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口腔ケアの放射線粘膜炎の緩和効果

2010年07月03日
がん化学・放射線治療の休止・中断の理由のところで、頭頸部がん治療では発熱・疼痛。不安が理由であったと述べました。そして、それらは口腔ケアの非介入により起きていた可能性があることを示しました。
それでは、口腔ケアの介入(具体的は方法は粘膜炎マネージメント術・口腔ケア参照)によりどれくらいの効果があるかご存じですか?
実際の症例を呈示しつつ2000年に僕が発表した論文を紹介したいと思います。
論文要旨


=この研究のきっかけ=
当時は、今ほど、がん口腔ケアが盛んでなく、一部の先生方から口腔ケアの有効性を示唆する意見が聞かれ始めていた時期だったと記憶しています。
僕も医学部放射線科での学内留学で、放射線治療中の粘膜炎の増強と口腔衛生状態には少なからず関係があると感じていましたし、口腔ケアの重要性を訴えるには根拠となるデータの提示が必要でした。
また、当時はEBMなんて言葉がはやり始め、「それなら僕がEBMを発信!!そして、歯科医療の新たな分野を開拓してやる!!」なんて思っていたんでしょうね。入院カルテを借りるために、外来業務の合間に当時の病院の地下室と外来を行き来し、分厚いカルテをめくってデータ収集したのを覚えています。

=結果=
口腔と上部食道に放射線を投入された18人の頭頸部癌患者さんの放射線治療中の粘膜炎の重篤度の推移を口腔ケアされた群(8人)と口腔ケアされなかった群(10人)を比較しました。
Criteriaの詳細はこちらで。

これはNCI-CTC ver2.0(JCOG版)での客観的な粘膜炎のGradeの比較です(図はEORTC/RTOG scoreとなっていますが気にしないで下さいね)。
口腔ケアの効果2
口腔ケア群は粘膜炎の悪化が軽度で、大部分はの Grade 2-3で推移していました。一方、口腔ケアされなかった群は早期から Grade3だけでなくGrade4も出現していました。

次に、これはEORTC/RTOG scoreでの主観的な疼痛・機能障害 scoreでの比較です(図ではJCOGとなっていますが気にしないで下さいね)。
口腔ケアの効果1
口腔ケア群は麻薬の必要な疼痛はなく、経口摂取が維持できていました。

また、口腔ケア群には放射線治療の休止・中断症例がなかったのですが、口腔ケアをされなかった群では20-30Gyで2人、30-40Gy、40-50Gyでそれぞれ1人いました。理由は、口内痛が3人、熱発が1人でした。

すなわち、
口腔ケアにより粘膜炎の悪化を遅くし、経口摂取が維持され、治療の休止・中断が予防されることが示唆されました。

実際の症例を呈示しますが、上段が口腔ケア症例、下段が口腔ケアされなかった症例です。
両者とも舌癌のCRT症例で、右が口腔衛生状態を示しています。細菌は赤く染まるので。赤が多いほど細菌が多い状態です。
口腔ケアの効果症例
両者とも56Gyの時点です。
どうですか?年齢、性別、治療法、全身状態には大きな差はありません。違うのは口腔ケアされているかどうかです。

これらの結果から、
僕は、粘膜炎や疼痛の増強の主たる要因は不良な口腔衛生による細菌感染であり、口腔ケアは経口摂取を可能とし、患者QOLの維持に役立つと考えています

=最後に=
この論文の裏話です。
良くお勉強している方は論文を見てもう分かったかも知れません。
実は論文中のTable2の粘膜炎 criteriaが逆になっています。
僕も最新情報を得るために論文は読みます。結構?な事が出てきます。論文は常に自分の経験と批判的な態度で読むのが良いのかも知れませんね、あはは(^^;

また、気を付けて欲しいのは、この論文は術後照射の場合です。
CRT(化学放射線や大量化学療法の場合はもっとGradeやScoreが上がると思いますし、その他の消化器症状を考えると口腔ケアは更に重要ですね。
なんせ、口腔ケアはがん治療の標準装備ですから、まだ行われていない施設の方がいらっしゃったら早速始めて見て下さいね。

安い(患者負担が少ない)、早い(効果が即効的)、おいしい(流行、論文が少ない等の様々な意味で)、
まさに、○○的ですよ(^^)/
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