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栄養サポート・私見

2010年10月03日
今回は栄養サポートの話です。

 栄養サポートは良好な栄養状態の維持やがん治療に伴う有害事象からの回復に重要です。
特に経口摂取を維持できなくなる時、入院中の患者さんの治療に対する気持ちがネガティブになるので僕は経口摂取にこだわっています。
なぜならば、
口から食べることが自然の行為ですし、
咽頭粘膜炎がひどい状態の所に経鼻チューブが挿入され、常に機械的に刺激していることは
それ自身が粘膜炎の増強因子になることは容易に推測できますし、
場合によっては誤嚥性肺炎の原因になったりもします。
また、チューブが鼻からでている顔を見ると「いかにも病人」という感じで精神的にも良くありません
上記の理由から、僕は経口摂取が出来ない場合は経鼻よりも経腸の方が良いと思っています。
 
 また、治療中の必要エネルギーの算出には主にHarris-Benedictの式が使われています。
式は
基礎エネルギー消費量(Kcal/日)=(6.47 or 665.1)x(13.75 or 9.56)x 体重(kg)x 身長(cm)-(6.76 or 4.68)x 年齢(才)x活動係数x障害係数
です。
障害係数に化学療法や放射線治療がないのですが、数年前の頭頸部癌学会で仮想係数を算出した発表がありその発表では係数が3-4だったと記憶しています。

 経験上、化学療法や放射線治療はかなり体力消耗する治療だと言うことが分かりますが、化学療法は消耗性治療ではなく、化学療法による腸管吸収障害が治療中の体重減少、低栄養の主因でないかと僕は考えています。
もしそうだとしたら、食事の形態の工夫だけでなく吸収を良くする工夫が必要になります。これは数年前に化学療法食の提案として亀田製菓の研究室の子に相談したのですが、門前払いになってしまいました。この研究は今でも未練があります、話がそれましたね(^^;

話を戻しますと
 化学療法や放射線治療中の経口摂取による栄養摂取は粘膜炎の痛みにより損なわれます。
実際、粘膜炎の治療(ステロイドとNSAIDs)により経口摂取量が増加し体重減少を抑制できたという報告や、粘膜炎の重篤なほど経管栄養の期間が長くなるという報告がありますので、粘膜炎の管理が重要な位置を占めていると考えられます。
すなわち、
栄養サポートと口腔ケアは切っても切れない関係
にあります。

 栄養サポートが難しいのは
粘膜炎だけでなく、口腔・咽頭乾燥、味覚障害、嚥下障害、吐き気・嘔吐、倦怠感等、
栄養状態を悪くする多くの要因が複雑に絡み合っている
ところであり、
多職種によるチームアプローチが必要
なところです。
そして、
栄養サポート成功の鍵
患者さんの訴えに耳を傾けること!!
最良のアドバイザー
治療を経験した患者さん!!
だと思っています。

実際、僕の患者さんに口腔多発癌で下顎骨正中区域切除(再建後顎骨壊死・無再建)、舌亜全摘、両側頸部郭清術、原発を含めた全頸部照射をされた料理が大好きな患者さんがいました。その方は顎骨壊死の治療のために口腔外科から僕の所に紹介されたのですが、経口摂取にこだわり自分で色々な工夫をされていました。その方の体験談から化学・放射線治療中や治療後の患者にアドバイスをして大変喜ばれたのを思い出します。

 みなさんは症状別の具体的なレシピを知りたいのだと思います。
静岡県立がんセンターが非常に参考になるHPを立ち上げています。
このHPの良いところは患者さんの意見を取り入れているところと治療後の食事に有用な点です。
是非、参考にして下さい。
もちろん、僕も常に参考にさせて貰っています。

クリック


SURVIVORSHIP.jp


 最後に、がん栄養サポートは急性期だけの問題ではありません。
手術による嚥下機能障害、放射線治療による口腔・咽頭乾燥は慢性的に続きます。
慢性期の栄養サポートこそ患者さんにとっては重要ではないかと患者さんとの会話から僕は感じています。
今後、この点もふまえ、しっかりと足場を固めていく必要がありそうです。
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味覚障害

2011年10月30日
がん治療において味覚障害(味覚異常・味覚低下)はあまり注目されていませんでしたが、
最近、化学療法中の患者さんの味覚障害が腫瘍内科医の間で話題となっていますね。

これは患者さんにとって非常によいことだと感じています。
なぜならば、味覚障害は精神的な苦痛のみならず肉体的な苦痛をも引き起こし、
患者QOL、治療の質(今度からQOTと呼ぼうかな(^^;)を落とすだけでなく、化学療法においては治療効果も落としてしまうことが懸念され、
これらが注目されることはがん治療の質が大きく改善される可能性があるからです。

味覚異常と臨床症状の関係図)

味覚障害

しかし、色々調べてみましたが、予防法、対処法、治療法については全くと言っていいほど分かってないようです。

僕の経験では、化学療法患者さんからは鉄をなめているような味がするとか、放射線治療患者さんからは砂を食べているようだとか、よく聞きますし、僕が今行っている味覚と唾液の前向き調査では甘みが苦く感じる方が多いようです。
皆さんの関わっている患者さんはどうですか?

味覚障害は化学療法、放射線治療、GVHD患者さんの他に免疫療法(IL-2やIFN)でも起きる可能性があるようです。
考えられている原因は、抗腫瘍薬による影響(味蕾細胞、感覚神経)、唾液分泌低下、感染、精神的なものと言われていますが、はたしてどうなのでしょうか。
いくつかの論文(Haematologica、Supportive Cancer Therapy、J ClinNurs、Support Care Cancer等)を読むと

化学療法と放射線治療において、それぞれ、
発生率は、50-60%と60-70%、
発生時期は、3-7日と7-14日、
回復時期は、15-28日、90-180日

であると書かれていました。

治療法は、亜鉛、スクラルファート等が一部で効果的であったと報告されてており、
栄養士のカウンセリングによる食事の変更も重要なようです。
亜鉛製剤は味が悪いですし、がんセンターの過去のレポートでは化学療法患者さんは柑橘系の香りを好むようになると報告されていたと記憶しますので、
香りや栄養素をふくめた食事の工夫が大切だと感じまています。
残念なことに、僕は病院で親しい栄養士さんがいませんし、NSTとのコネクションもありませんのでこれも課題ですね(TT)

日本歯科医師会での歯科医療の定義?は人生を支える医療です。
おいしい食事は人生を豊かにします。当然、口が痛いとおいしく食べられません。
がん患者さんに対する味覚障害対策、
当然、適切な粘膜炎対策なくして成立しません。


味覚障害対策は栄養士さん、薬剤師さん、看護師さん、がん医療医、臨床心理士、がん歯科医師らが一丸となって取り組んで行かなければならない大切な仕事。
これらの職種の1つ欠けても味覚障害対策は成り立たないんだと思う。


がんチーム医療は輪でつながっていないとダメなんだとつくづく思う。
僕の所属するがんチームはまだ途切れ途切れの線でしかない。
どうしたら輪になるのだろうか。。
多分、多くのがん医療施設の課題なのだろうな。。
焦らず、ゆる~く探していこうと思う、
気がついたら輪になっていたというのが良いんだけどなぁ、
都合良すぎるか、あはは(^^;


あっ、まだまだ、書きたいことがいっぱいあるので、後日、TEXT BOOKにアップしますね!!
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