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粘膜炎マネージメント術 2;口腔ケア

2010年03月14日
MASCC/ISOOガイドラインに、
口腔清掃は粘膜炎予防だけではなく全身感染症のリスクのある患者さんに対し有意にプラスに働くと書かれています。
これは粘膜炎の発生と増悪の機序を考えると当然ですね。
第一の目的は口腔内の細菌の減少だそうです。
口腔清掃による粘膜炎の発生率減少のデーターは放射線治療、全身化学療法、移植患者さんのデーターが示されていました。
僕の施設の報告とほぼ同様かやや低い結果となっていました。
この理由は後述の我々の施設の口腔ケアと一般的な標準ケアの違いで判断して頂ければと思います。
第二の目的は口腔内常在菌による敗血症のリスクの減少だそうです。
敗血症に関しては放射線治療単独では関係なく、化学療法を行うかが支持療法介入の鍵になりそうです。
しかし、敗血症のリスクをどれくらい減少させるか示した報告はないそうです
今後の研究課題ですね!!

MASCC/ISOOがはじめに推奨しているのが
患者さんと介助者への口腔ケアの教育
です。
すなわち、
我々歯科関連医療者は患者さん、介護者(ご家族、看護師さんでしょうか)への歯磨き方の指導をし、
介護者は患者さんと一緒に歯磨きの指導を受けなければならないのです。

そして、僕は口腔ケアの教育で最も重要なのは方法の指導ではなく、
なぜ口腔ケアをしなければならないのかを理解して頂く事だと思います。
MASCC/ISOOガイドラインにはその様なことは述べられていませんがあえて「教育」と表現したのにはその様な意味も含まれているんだと思っています。
実際にがん支持療法を行っている方には理解して頂けると思います。

標準口腔ケアの基本は、
柔らかめの歯ブラシフロスの使用と生理食塩水によるすすぎです。
NHI等の代表的な支持療法のHPを見てまとめてみますと、
標準口腔ケア(セルフケア)
1) 歯磨き方はバス法
2) フロスの使用
3) 歯磨剤は使用しない
4) 生理食塩水等の non-medicatedなうがい液

のようです。

僕の施設では
1)歯磨き方はバス法
2) 歯間ブラシの使用
3) スポンジブラシの使用
4) 歯磨剤は使用しない
5) アズノール製剤のうがい薬

で行っています。

歯磨きはバス法:これはもっとも感染経路となりやすい歯周ポケットの清掃です。
歯間ブラシの使用:この理由は小児がん以外は壮年層が多くフロスよりも使用しやすく安全だからです。小児の場合でもフロスは使用を勧めていません(お子さんが嫌がって口腔ケアそのものをさせてくれなくなることがあるからです)。
スポンジブラシの使用:粘膜の微小潰瘍からの感染を防ぐためとフィブリン(口腔内細菌のコロニー形成の温床)の除去のためです。
歯磨剤を使用しない:これは安定剤としてアルコールが含まれる物が多く、場合によっては粘膜炎や口腔乾燥を引き起こすからです。
アズノール製剤でうがい薬:これはMASCC/ISOOのガイドラインに反しています。使わない方が良いのかも知れません。僕たちは抗炎症作用、抗酸化作用、創傷治癒促進に期待をして使用しています。刺激等で使えない場合には生理食塩水を代用しています。

セルフケアの回数は1日3回です。
食事を取らなくても関係ありません
なぜならば、粘膜は皮膚の親戚です。常に細胞の代謝でよけいな垢のようなタンパク質が出てきます。それが細菌が繁殖するためのエネルギーになるからです。

歯磨きの具体的な方法
1) アズノール製剤でうがい
2) アズノール製剤を歯ブラシにつけてバス法で歯磨き
3) アズノール製剤を歯間ブラシにつけて歯磨き(小児はのぞく)
4) アズノール製剤をスポンジブラシにつけて粘膜磨き
5) 2時間に1回のアズノール製剤によるうがい、嘔吐時にはその都度追加
です。

当然、全身状態を加味して減らしたり無くしたりすることもあります。
たまに、スポンジブラシのみ、うがいのみの施設が見受けられますが、
僕たちは全身状態を加味しながら許される範囲で最大限歯磨きを行っています。

なぜならば、口腔内細菌の約80%は歯の周りに存在します。その他約20%が粘膜なのです。
歯の形態は非常に複雑で、スポンジブラシでは歯の周りの細菌の除去は困難なのです。
特に全身感染の経路である歯周ポケットの清掃は不可能です。
全身感染症予防には歯ブラシが一番です。

しかし、歯ブラシを行わない時期もあります。
それは、血小板数です。1万~2万までと施設により幅がありますが、
僕の施設では血小板 2万以下またはPT-INR 3以上と決めています。この時期はスポンジブラシもしくはうがいのみです。
なぜならば、もし出血があると止血困難になるからです。

まだまだ、書ききれないことがあるのですが、今日はここまでにしておきます。

次回は粘膜炎緩和のための薬(オプション)について説明しようと思います。

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口腔ケア・オプション

2010年08月29日
学会の準備で更新が送れてすみません(^^;。

MASCC/ISOO guidelineでは標準的な口腔ケア(患者教育・保清・保湿)が最も重要であると書かれている事を紹介しました。
そして、洗口剤としてnon-medicatedなうがい液を使用する事とされていることも紹介しましたが、
ある方から
「真菌症(カンジダ)、ウイルス感染(ヘルペス)になった場合どうしたら良いのか?この時にも Medicatedなうがい薬は使わない方が良いのか?」
と質問を受けましたので口腔ケアの追加をします。


また、現在、僕と後輩は東北大学の歯科放射線科と共同研究で「頭頸部癌化学放射線治療中の患者さんの真菌検査」をしています。
これは、フコナゾールのがん治療に伴う有効性を検証するための準備研究なのですが、現在のところ、標準口腔ケアを行っている僕の施設の患者さんは培養すると真菌のコロニーは数名の患者さんで確認されていますが、重篤な口腔カンジダ症や口腔ヘルペス感染症はほとんど認められておりません。
もし、カンジダやヘルペスが口腔内にできた場合は全身状態がかなり悪いか標準口腔ケアができていないのかも知れませんので、まずはこれらの再評価と改善が必要だと思います。
しかし、がん治療において免疫抑制による口腔カンジダ症や口腔ヘルペス感染症のリスクは当然ありますので、口腔ケアのオプションとして、有効である可能性のある medicatedな洗口剤を知っているにこしたことはありません。。

Optionとして、クロルヘキシジン、抗真菌薬、抗ウイルス薬が挙げられます。
これらはMASCC/ISOO guidelineで勧めないされていますが、その理由は多施設の研究で有効性が乏しいからと言う理由であり、がん治療に伴う有害事象を増悪させるわけではないようです。
当然、オプションですから標準口腔ケアで粘膜炎の増強、真菌症、ウイルス感染が認められたまたは疑われた場合に、クロルヘキシジン、抗真菌剤、抗ウイルス剤をそれぞれ応用するのがよろしいかと思います。

クロルへキシジン(コンクールF)
グルコン酸クロルヘキシジンです。これは歯垢浸透能力が低いのでしっかりと口腔清掃を行ってから使用することが原則で、歯の着色を引き起こしやすいという欠点もあります。これは放射線治療後の歯肉炎に有効であったと報告があります。詳細は後で調べますが報告されたものと日本では濃度が異なります。日本で洗口剤として使われているものは 0.05%ですが報告のものは約4倍の濃度だったと思いますので、効果が期待できるかどうかは疑問ですね。またあまり高濃度だと過敏症(0.2%以上だと過敏症の発生率がより高くなるそうです)や歯の着色が気になります。

抗真菌剤(フロリード・ファンギゾン・フコナゾール)
フロリードとファンギゾンはポリエン系ですので同様のものだと考えても良いかも知れません。フコナゾールはアゾール系で、上記の2剤で効かないときに有効とも言われていますね。
実は、ファンギゾンは Epstain先生らが白血病や骨髄移植患者さんの粘膜炎緩和に有効でないと報告していますが、フコナゾールは Nicolatou先生らが頭頸部放射線治療による粘膜炎緩和に有効であった(プラセボと比べカンジダのキャリアとgrade3-4の粘膜炎が1/4であった)と報告してますので有効かも知れませんね。しかし、前者は1992年、後者は2006年の報告ですから、口腔ケアの状態も含め精査が必要ですね(後で読んで追加します)。

抗ウイルス剤(アクロシビル)
ゾビラックスですね。ヘルペス持ちの僕は学会前は対への世話になっております(^^;
僕はあまり詳しくないのですが、邦文、英文含め抗ウイルス剤であるアクロシビルの白血病の治療や骨髄移植に伴う粘膜炎緩和の有効性が多く述べられているようです。

いずれにせよ、口腔内の真菌性の粘膜炎やウイルス性の口内炎に関しては標準口腔ケアが最も重要で、あくまでもオプションであることは間違いない様です。

次回から少しずつ口腔ケア以外の粘膜炎に続発する合併症の管理について書こうと思います。

話は180度変わりますが、
これから20年来の友人であるロングボーダー兼プロスキーヤーの H氏の結婚式です。
楽しみだなぁ、飲めるのが、あはは(^^;
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