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粘膜炎の緩和の目的と意義

2010年01月10日
「がん化学療法やがん放射線治療において、なぜ粘膜炎の緩和が必要なんでしょうか?」
僕は講演等で必ず聴衆の方に問いかけます。

「疼痛が軽減できるのでQOLやADLが維持できるから」
と言うような答えが返ってきます。

化学療法や放射線治療に伴う口腔粘膜炎と疼痛の程度、栄養状態、感染症等との関連は多く報告されています。それらを分かりやすくまとめた図がMAACC/ISOOのガイドラインに描かれていたので示します。
MASCC/ISOO

クリックで拡大します。

やはり、粘膜炎は痛く、経口摂取や栄養状態に影響し、患者さんの全身状態に悪影響しますので、
先ほどの答えは正解のようです。

しかし、僕は粘膜炎の緩和で最も重要な目的はそうでないと思っています。

化学療法の場合、粘膜炎が存在すると化学療法中の感染症の発生率が約2倍になります。
粘膜炎がひどい場合、抗癌剤の量を減らさなければならない事があります。
すなわち、本来必要な抗癌剤の量よりも減らして治療しなければならなくなります。
当然、治療成績が落ちてしまいます。

放射線治療の場合はもっと深刻です。
通常、放射線治療は週4~5回の治療を5~7週間継続します。
疼痛や発熱で1日休むと1~2%治療成績が落ちてしまいます。

極端な話をしますと、100%の制御率の病気が1日休むと制御率が98%になるのです。
通常、発熱等を起こすと3~5日間休む場合が多いですから、それを考えるとゾッとします。
ある施設では粘膜炎によって約11%の患者さんが頭頸部治療を途中でやめたと報告されています。
僕のの病院も口腔ケアを始める前は同様でした。
僕の病院では口腔ケアを始めてからはほとんどやめる方はいなくなりましたので、前出の施設では口腔ケアを行っていないのかも知れません。

口腔粘膜炎は化学療法や放射線治療において治療量を決定する因子(dose-limiting factor)の一つなのです
口腔ケアを行い口腔細菌の除去を行い粘膜炎からの全身感染症や肺炎を予防することにより、治療法を変えずに治療成績を上げることが出来るのです(正確には、その治療法の持つポテンシャルの低下を防ぐ)。

すなわち、僕は粘膜炎緩和の最も重要な目的は
「治療の休止や中断による治療成績低下の予防」
だと思っています。当然、QOLやADLが維持も大切ですが。
だから、がん口腔ケアの
第一の目的は肺炎、粘膜からの感染、疼痛による治療の休止・中断の予防
その次にQOL・ADLの維持
そして、入院期間の短縮、etc
と続くと思っています。

がん治療医の先生方へ
免疫抑制や粘膜炎のリスクのある治療を行う場合、
がん治療のポテンシャルを最大限引き出すために口腔ケアをご活用下さい。

何しろ、汚いお口を診察するより綺麗なお口を診察する方が断然気分の良いものです。

口腔ケアを行っている方へ
あなた達が
積極的に口腔ケアを行う事によってがん治療の成績向上に貢献できるのです。

すなわち、あなた方は今ケアを行っている患者さんの命を救う仕事をしているのです
決して、手など抜けません。

がん治療を行っている患者さんへ
「歯磨き」と「含嗽」は積極的に行って下さい。
学校や歯科医院で習った「歯磨き」と「口腔内の保湿」ががん治療における口腔ケアの基本なのです。決して、難しい技術はいりません。
丁寧に、優しく、時間をかけての3点がポイントです。
それによって、あなたが行われているがん治療が苦しい治療になるか楽な治療になるかが決まります。
治療効果も変化するのです。
決して楽ではないことは理解しています。
でも、出来ないことではないはずです。
がん治療のキモは
「我慢しない、甘えない、わがまま言わない、無理しない」
です

矛盾しているようですがバランスが必要なのです。

次回は、粘膜炎緩和の経済効果についてお話ししようと思います。
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