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粘膜炎の発生機序

2009年11月29日
粘膜炎発生機序を理解することは医療者だけではなく患者さんにとっても有用です。
それは、緩和法や治療法の開発、リスクの予測、他の副作用との関連の理解、だけでなく、患者さんの口腔ケアへの動機付けにもなります(セルフケアのやる気、治療に対する前向きな姿勢)。


化学療法と放射線治療における粘膜炎発生の機序はほぼ同様です。

その機序は J Support Oncol 2004; 2:21-36に Sonis STの執筆した Biological Approach to Mucositis.にに分かり易い図が出ていましたの見られると良いともいます。

細胞には寿命があり、組織は常に新しい細胞と入れ替わっています(これを turnoverと言います)。
細胞は基底細胞で作られ粘膜上皮となりはがれ落ちます(皮膚で言う垢です)。
口腔粘膜のturnoverは約2週間です。
すなわち、基底細胞で作られた赤ちゃんの粘膜細胞は少しずつ粘膜表層に移動し、2週間で粘膜表層(粘膜上皮層)の細胞になりはがれ落ちます。

放射線治療や化学療法が行われると基底細胞がサイトカイン(様々な毒素)で細胞障害が起きます。加えて、様々な炎症性物質が血管から細胞間隙に漏出してきて組織が炎症を起こします。それが繰り返されると粘膜に潰瘍が形成され、その潰瘍に口腔内常在菌が付着することで様々なサイトカインや炎症性物質の誘導が起き、粘膜炎が増強します。

口腔ケアはこの粘膜炎を増強させる口腔内常在菌を排除(少なくし)し潰瘍層における粘膜炎の増強を緩和することを目的としています。
加えて、口腔内の細菌を減らすことにより、咽頭の細菌の数も減り肺炎原因菌(ブドウ球菌)も減少することから誤嚥性肺炎も予防します。


放射線治療では潰瘍層は約10日から14日で起き、その後、線量の増強に伴い増強します。放射線治療単独では50-70Gyの線量では経口摂取出来る程度の粘膜炎です。化学放射線治療では60-70Gyで胃ろう(経口摂取できない)場合が多いです。

化学療法では様々な問題が出てきます。
化学療法初日から消化器の細胞のアポトーシスが始まり、3日で栄養の消化に必要なクリプトの短縮、繊毛の減少、細胞分裂の低下が起きます。すなわち、化学療法開始から3日で栄養吸収傷害が起きます。それが5日くらいまで続き回復してきます。
臨床的には、腹痛、腹部膨張と下痢は3日ぐらいで始まり、7日まで続く。同時期に、口内炎も通常始まるので経口摂取が困難になる場合もあります。加えて、腸管の透過性の亢進(細菌が腸管から吸収され易くなる)と運動障害が起きますので下痢し易くなります。
すなわち、口腔ケアで、腸管に落ちる細菌を少なくする事で下痢や発熱(敗血症)を予防できるのです。

特に、放射線が消化管に投入される場合、化学療法の所で書いた消化管障害が強く起きなかなか回復せず、場合によっては、イレウス、穿孔または瘻孔形成を起こしますが、現在の放射線治療医は副作用に敏感でそのような事が起きないように治療計画を工夫しますし、もし、病気を治すためにしょうがない場合は説明してくれるでしょう。最悪の場合は、治療後のQOLを下げないための様々な治療の提案があると思いますので心配要らないと思います。


=最後に=
粘膜炎(口腔・消化管の)の機序を考えると口腔ケアは潰瘍への細菌の影響の低減、誤嚥性肺炎の低減と腸管への影響の低減に有効なのです。
すなわち、がん治療における口腔ケアは科学的根拠にのっとった理由があるのです。


最近、僕は多発性肺転移、骨転移、口腔内転移の骨肉腫の男の子の口腔ケアを行いましたところ、入院当初か1週間続いていた39.5度の口腔ケアの翌日から発熱が37.5度程度の発熱になった症例を経験しました。たぶん、彼の発熱の原因として腫瘍による発熱の他に誤嚥や口腔粘膜からの感染があったのでしょう。

次回は口腔ケアの意義について述べようと思います。
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粘膜炎の評価方法

2009年12月12日
今回は粘膜炎の評価方法を説明をしようと思います。

評価法よりも予防の具体的な方法や粘膜炎のリスクの高い具体的な抗ガン剤を知りたいかも知れませんが、
今後、お話しする予定であるコンテンツを理解されるのに必要です。

そして、評価法とその具体的な内容を知ることにより、
患者さんやそのご家族はお調べになる様々な資料を明確に理解できるようになりますし、
医療者は日常臨床で医療者間で意思の疎通がし易くなります。

特に、研究行う場合、これから行う研究を幅広いものにするためにも必要になります。
具体的には、他施設との比較には評価法が統一されている必要がありますし、広く使われている評価法を使うことにより、新しい粘膜炎予防法(正確には緩和法)を行う場合、既出の様々な方法と予防(緩和)効果の比較が出来る様になります。

本題に入りますが、

MASCC/ISOOのグループがガイドラインを作成するに当たり、およそ 400の論文を調べたそうです。
結果は、
NCI-CTCAE Ver 2.0のスコアーの使用が 43%、
WHOのスコアーの使用が38%

であったそうです。
僕の尊敬する静がんの大田先生も NCI-CTCAE Ver 3.0を勧めていましたし、僕自身も NCI-CTCAE Ver 3.0を使用しています。
JCOGもそうです。

私がNIC-CTCAE Ver 3.0のスコアを使用している理由は
主観的(機能的)な評価と客観(見た目)的な評価が出来るからです。


以下にまとめた表を提示します。
粘膜炎

名称未設定 1のコピー
Grade 4の写真は僕の外来は口腔ケアを積極的に行っているので手元にありませんでした(NK Tcell lymphomaの方でいらっしゃったと思いますので後ほど UPします)。
Grade 3の写真は治療中に発熱や疼痛のコントロールが上手くいかず、僕の元に紹介された舌癌化学放射線療法の患者さんです。

今回、最新バージョン(Ver 4.0)も含め訳してみました。
あくまで個人的な意見ですが、僕はNCI-CTCAEの Ver 3.0が好きです。
なぜかというと、視診の評価と機能の評価は一致しないことが多いからです。

ここで注意して頂きたいのは、これらの評価は数年に1回バージョンアップされますので、資料を読む場合はどのバージョンか使用されているかをチェックする必要がありますし、研究をする場合には同様の研究で多く使用されているバージョンを使用することが望ましいと言うことです。
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粘膜炎の緩和の目的と意義

2010年01月10日
「がん化学療法やがん放射線治療において、なぜ粘膜炎の緩和が必要なんでしょうか?」
僕は講演等で必ず聴衆の方に問いかけます。

「疼痛が軽減できるのでQOLやADLが維持できるから」
と言うような答えが返ってきます。

化学療法や放射線治療に伴う口腔粘膜炎と疼痛の程度、栄養状態、感染症等との関連は多く報告されています。それらを分かりやすくまとめた図がMAACC/ISOOのガイドラインに描かれていたので示します。
MASCC/ISOO

クリックで拡大します。

やはり、粘膜炎は痛く、経口摂取や栄養状態に影響し、患者さんの全身状態に悪影響しますので、
先ほどの答えは正解のようです。

しかし、僕は粘膜炎の緩和で最も重要な目的はそうでないと思っています。

化学療法の場合、粘膜炎が存在すると化学療法中の感染症の発生率が約2倍になります。
粘膜炎がひどい場合、抗癌剤の量を減らさなければならない事があります。
すなわち、本来必要な抗癌剤の量よりも減らして治療しなければならなくなります。
当然、治療成績が落ちてしまいます。

放射線治療の場合はもっと深刻です。
通常、放射線治療は週4~5回の治療を5~7週間継続します。
疼痛や発熱で1日休むと1~2%治療成績が落ちてしまいます。

極端な話をしますと、100%の制御率の病気が1日休むと制御率が98%になるのです。
通常、発熱等を起こすと3~5日間休む場合が多いですから、それを考えるとゾッとします。
ある施設では粘膜炎によって約11%の患者さんが頭頸部治療を途中でやめたと報告されています。
僕のの病院も口腔ケアを始める前は同様でした。
僕の病院では口腔ケアを始めてからはほとんどやめる方はいなくなりましたので、前出の施設では口腔ケアを行っていないのかも知れません。

口腔粘膜炎は化学療法や放射線治療において治療量を決定する因子(dose-limiting factor)の一つなのです
口腔ケアを行い口腔細菌の除去を行い粘膜炎からの全身感染症や肺炎を予防することにより、治療法を変えずに治療成績を上げることが出来るのです(正確には、その治療法の持つポテンシャルの低下を防ぐ)。

すなわち、僕は粘膜炎緩和の最も重要な目的は
「治療の休止や中断による治療成績低下の予防」
だと思っています。当然、QOLやADLが維持も大切ですが。
だから、がん口腔ケアの
第一の目的は肺炎、粘膜からの感染、疼痛による治療の休止・中断の予防
その次にQOL・ADLの維持
そして、入院期間の短縮、etc
と続くと思っています。

がん治療医の先生方へ
免疫抑制や粘膜炎のリスクのある治療を行う場合、
がん治療のポテンシャルを最大限引き出すために口腔ケアをご活用下さい。

何しろ、汚いお口を診察するより綺麗なお口を診察する方が断然気分の良いものです。

口腔ケアを行っている方へ
あなた達が
積極的に口腔ケアを行う事によってがん治療の成績向上に貢献できるのです。

すなわち、あなた方は今ケアを行っている患者さんの命を救う仕事をしているのです
決して、手など抜けません。

がん治療を行っている患者さんへ
「歯磨き」と「含嗽」は積極的に行って下さい。
学校や歯科医院で習った「歯磨き」と「口腔内の保湿」ががん治療における口腔ケアの基本なのです。決して、難しい技術はいりません。
丁寧に、優しく、時間をかけての3点がポイントです。
それによって、あなたが行われているがん治療が苦しい治療になるか楽な治療になるかが決まります。
治療効果も変化するのです。
決して楽ではないことは理解しています。
でも、出来ないことではないはずです。
がん治療のキモは
「我慢しない、甘えない、わがまま言わない、無理しない」
です

矛盾しているようですがバランスが必要なのです。

次回は、粘膜炎緩和の経済効果についてお話ししようと思います。
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がん化学・放射線治療の休止・中断の理由

2010年01月17日
頭頸部癌のがん化学療法・放射線治療の
休止・中断の主な理由は本当に粘膜炎や誤嚥性肺炎等の発熱なのでしょうか?
口腔ケアはがん治療に伴う粘膜炎や発熱に本当に効果的なのでしょうか?
と、質問を頂きました。

5年前、日本放射線腫瘍学会で
「頭頸部放射線治療における休止。中断の理由と口腔ケアの有効性」
について発表したことがありましたので、紹介したいと思います。

=この研究報告を行ったきっかけ=
当時、国内外問わず、有害事象について述べられた論文のほとんどは
「○○という治療を行ったところ5年生存率が○○に上昇し、有害事象として Grade○以上の粘膜炎が○%発症し、○%の治療の中断があった」
と言うような内容で治療効果が中心で有害事象(副作用)についてはおまけ程度でした。
経験上、口腔ケアは粘膜炎や熱発の緩和に有効であると確信していましたが、
実際に
頭頸部放射線治療でどれくらいの方が治療を途中で休んだり断念したするのか
口腔ケアがそれらの緩和にどれだけ貢献しているか
知りたかったからです。



=結果=
中止・中断の理由
口腔から上部食道まで放射線が投入された患者さん51人をカルテ上で調査したところ、
1/5(20%)の方が治療を休止もしくは中断し、
その理由の大部分は疼痛と発熱でした。
この研究で驚いたのはこれから増強するであろう痛みに対する不安から治療を断念した方が2人もいたことです。
休止・中断の理由2
そして、これらの症例を口腔ケア介入症例と非介入症例で分けたところ、
休止・中断症例は総て口腔ケア非介入症例でした。


=最後に=
やはり、がん治療中の頭頸部がん治療患者さんを苦しめているのは粘膜炎と発熱でした。
僕は発熱の理由は
粘膜(微細な潰瘍)からの感染、
歯周組織(血流が豊富で弱い組織)からの感染、
誤嚥による発熱

が大部分だと考えています。
その理由は口腔ケアで予防できることと、疼痛を薬(医療麻薬やNSAID)や粘膜保護材(アルロイドG)で緩和しても経口摂取量は増えるのですが肺炎の予防は出来ない
からです。クリック→参考文献:玉村 裕保、他.日本放射線腫瘍学会誌 17: 169-175. 2005


そして、痛みというのは物理的なものだけでなくスピリチュアルな部分も大切なんだなぁと思い知らされました。

口腔ケアは、
がん治療の効果を最大限引き出し
患者さんの苦痛を緩和する
だけではなく、
精神的な支えになっているのかもしれません。

がん口腔ケア
やり甲斐のある、本当に重要な仕事です!!


次回は、粘膜炎の口腔ケアの効果についてご紹介しようと思います。








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化学療法を受けられる・受けられた方へ。

2010年06月25日
数年前にアメリカのNIHのホームページ見て「これだ!!」って、
駄目もとで「日本語に訳して日本で公表したい」ってメールしたら、
「著作権ないから自由に訳して良いです。その代わり、日本語訳を送って下さい」って言われました。
NIHが太っ腹って言うかひどく感動したことを覚えています。

まるでキューリー夫妻が放射線同位元素の分離に成功した後、その方法の特許を取らなかったから放射線治療がこの100年足らずで飛躍的に進歩した事を思い出し感動しました(^^;

日本とアメリカ。。保険制度、社会保障。宗教観etc違うところいっぱいあるけど参考までに読んでいただけたら嬉しいです(^^)/

詳細はクリックして下さい。
     ↓
化学療法を受けられる方・受けられた方へ

これから少しずつ、医療従事者用、放射線治療バージョンをアップしていこうと思います。
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